Lunar Resources

月は安定した軌道を持つ最も地球に近い固体天体であり、フィードストックとしての必要性が非常に高いと考えられています。宇宙空間で比較的豊富に存在している始原的隕石とは異なり、地殻濃集元素が高い濃集度で存在することが期待されています。

近年の探査により、特に月の極域に揮発性物質が濃集している可能性が指摘されてきました。この揮発性物質は、生命維持や燃料、溶媒、還元剤の獲得など宇宙資源の観点から重要視されています。そのため、各国の宇宙機関や民間企業などはこれらの揮発性物質を理解し、将来的に利用可能であるかを判断するために多くの探査を計画・進行中です。

月資源開発におけるTSUKIMI計画の立ち位置

資源開発の一般的な流れは、まず科学(Geoscience)があり、次に探査(Exploration)フェーズ、発見(Discovery)フェーズがあり、そこから開発(Development)フェーズに入り、生産(Production)フェーズへと移行します。月の資源については、現在はまだExploration/Discoveryフェーズであり、ターゲット地域どころか、それを含む領域の選定もあいまいな状態で。そのため広域探査と地下の詳細探査の双方を同時に実施する必要があります。

TSUKIMI計画の最大の利点は、月面全域を同一計測器で地下の観測ができる点にあります。今後も2024年までに予定されている周回探査では、中性子分光計を除けば地下からの情報が得られるものはなく、本計画は強い独自性を持ちます。一方でLUPEXやCLPSによる着陸探査やローバによる月面探査により、氷の存在や土砂の化学組成/鉱物組成に関する高精度のデータが、月面上の数点において今後取得される見込みで。TSUKIMI計画によって月面全域のデータが取得できていれば、こうした着陸機/ローバによる特定地点の高解像度分析結果を、一気に月面へ全面展開することが可能となります。これは今後の資源探査・資源利用の意味で極めて重要な地図となることを意味します

TSUKIMI計画の最終フェーズにおいては、高度を下げて高分解能による観測を実施することも検討しています。着陸機やローバによる観測データを基に、周回フェーズによるデータと照らし合わせることで、より具体的に詳細観測を実施すべき領域が浮かび上がるはずで、そこを目指して最終フェーズでは高解像度観測を実施できれば、人類にとって有益な有用物の地表付近における濃集領域を発見することができる可能性があり、独自の宝の地図とも呼ぶべき月面資源地図が作成できるかもしれないと期待しています。