Technology

TSUKIMI計画では、テラヘルツ帯と呼ばれる周波数の電磁波(テラヘルツ波)用いたテラヘルツセンシングを行います。テラヘルツ帯とは、明確な定義はないものの一般的には0.1-10 THzの周波数のことを指します。テラヘルツ波を用いることで、月地下数十cmまでの輝度温度と誘電率を測定可能です。これらは月地下の物理的・物質的情報を保持しており、適切な解析を行うことで月地下の物質、特に水氷の存在量を解明できると期待されます。

観測機器

TSUKIMI計画では、耐宇宙環境を備えた多周波数チャンネルのテラヘルツ波センサを開発しています。また、最適な資源探査実施のために軌道上において衛星とセンサを統一的に制御する衛星デジタル処理技術を開発し、これらの技術を統合することで、宇宙での運用が可能なシステムを開発し、月面の水資源探査が実現可能であることを検証するための研究開発を実施しています。

テラヘルツセンシング

あらゆる物質は、その物質の温度に応じたエネルギーを放射しています。テラヘルツセンシングではこの放射されたエネルギーを観測することで、地下の輝度温度(物体が黒体であると仮定した場合の温度)を測定します。TSUKIMI計画では同時に、偏波観測を行うことで誘電率の測定も行います。これらは月地下の物理的・物質的情報を保持しており、適切な解析を行うことで月地下の物質、特に水氷の存在量を解明できると期待されます。

しかし、これらは直接的には物理的・物質的な情報に置き換えることはできません。そこで同チームは、解析に必要な岩石のテラヘルツ帯での挙動に関するデータベースを構築するとともに、データ解析アルゴリズムの研究開発を行っています。データベースの構築には、月の表層付近に存在する岩石・鉱物を科学的に検討する必要があります。そこで我々は過去に月から持ち帰られたアポロ・ルナ試料や月隕石、リモートセンシングデータなどをもとに月の模擬物質(シミュラント)を作製しています。

実験室における計測の実施

観測量である輝度温度より推定される誘電率から月レゴリスの構成物質を明らかにするため、物性データベースを作成

月表層模擬物質の開発

データベース作成に必要不可欠な月レゴリスの特性を正確に反映した模擬物質の作製技術を開発